久々の更新になります。
大きな動きがありました。先週、新声明が決定しました。(産経新聞報道によると、総会を経ず、委員会だけで勝手に決めたそうです)
また、3/7の会議の議事録も発表となりました。会議では、益川敏英博士ら「権威ある(?)」学者先生たちの3団体の意見書が配布されました。
今回については、目立った成果は挙げられませんでした。皆様方のおかげで、よくここまで戦えたと思いましたが、敗北は敗北です。
今後ですが、①3/31までに5000名の署名集めは困難と判断し、期限は無期限10,000名とします。②署名の文面は新声明を受けて変えます。今後も拡大した運動を展開していきますので、どうか今後もご協力をお願いいたします。
新声明の原文はこちらです
軍事的安全保障研究に関する声明平成29年(2017年)3月24日日 本 学 術 会 議
平成 29 年(2017 年)3月 24 日第 243 回 幹 事 会軍事的安全保障研究に関する声明日本学術会 議日本学術会議が 1949 年に創設され、1950 年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を、また 1967 年には同じ文言を含む「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発した背景には、科学者コミュニティの戦争協力への反省と、再び同様の事態が生じることへの懸念があった。近年、再び学術と軍事が接近しつつある中、われわれは、大学等の研究機関における軍事的安全保障研究、すなわち、軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあることをここに確認し、上記2つの声明を継承する。科学者コミュニティが追求すべきは、何よりも学術の健全な発展であり、それを通じて社会からの負託に応えることである。学術研究がとりわけ政治権力によって制約されたり動員されたりすることがあるという歴史的な経験をふまえて、研究の自主性・自律性、そして特に研究成果の公開性が担保されなければならない。しかるに、軍事的安全保障研究では、研究の期間内及び期間後に、研究の方向性や秘密性の保持をめぐって、政府による研究者の活動への介入が強まる懸念がある。防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」(2015 年度発足)では、将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家でなく同庁内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い。学術の健全な発展という見地から、むしろ必要なのは、科学者の研究の自主性・自律性、研究成果の公開性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実である。研究成果は、時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的な目的のためにも使用されうるため、まずは研究の入り口で研究資金の出所等に関する慎重な判断が求められる。大学等の各研究機関は、施設・情報・知的財産等の管理責任を有し、国内外に開かれた自由な研究・教育環境を維持する責任を負うことから、軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべきである。学協会等において、それぞれの学術分野の性格に応じて、ガイドライン等を設定することも求められる。研究の適切性をめぐっては、学術的な蓄積にもとづいて、科学者コミュニティにおいて一定の共通認識が形成される必要があり、個々の科学者はもとより、各研究機関、各分野の学協会、そして科学者コミュニティが社会と共に真摯な議論を続けて行かなければならない。科学者を代表する機関としての日本学術会議は、そうした議論に資する視点と知見を提供すべく、今後も率先して検討を進めて行く。
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/anzenhosyo/pdf23/170324-seimeikakutei.pdf
参考記事
学術会議、軍事科学研究を「拒否」
産経新聞 3/26(日) 7:55配信https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170326-00000053-san-pol
■現状見ない“助成つぶし” 研究者「レッテル貼られる」
軍事目的の研究を拒否した50年前の方針を「継承」するとした日本学術会議の声明が、早くも研究現場に影響を及ぼしつつある。防衛省が創設した研究助成制度への応募に二の足を踏む研究者が相次いでいるのだ。学術会議は当初、4月の総会での声明採択を目指していた。しかし執行部でつくる幹事会は24日、総会で議論した上で採決すべきだとの意見を押し切り、声明を決定した。国民を守る自衛隊の装備充実につながっていく取り組みが後退する恐れが出てきた。 (小野晋史)
防衛省は、防衛と民生双方に応用可能なデュアルユース(軍民両用)技術を研究する大学や研究機関を支援するため、平成27年度に「安全保障技術研究推進制度」を創設。29年度予算案では28年度の6億円を上回る110億円を計上した。しかし、学術会議の声明案が3月に公表されると、雲行きが怪しくなってきた。
「学術会議での議論が始まると、大学から『この制度に応募する場合、事前に大学と相談するように』とのお触れが出た。せっかくの助成制度なのに、相談したら止められるのだろう」
国立大で航空宇宙工学を研究する男性教授は声を潜め、「公募結果は公表される。大学側は、自分たちの大学から利用者が出たら学界で肩身が狭くなると考えている」と続けた。
既に法政大や関西大などは、学内の研究者による応募の禁止を決めた。大学が日頃強調する研究の自由を逆に封じる対応だ。
研究者の間からは「指導教授が声明に賛成だと若手が応募しにくい」「助成を受けたらレッテルを貼られそうだ」との声も上がり、研究者が制度を生かせない環境が醸成されつつある。
声明は助成制度を批判し、大学などに審査機関を作ることも促した。声明に法的拘束力はないが、応募を妨害する方向で運用されかねない。
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声明では「軍事目的の科学研究を行わない」とした過去の声明を「継承する」としたが、肝心の軍事科学研究の定義は曖昧だ。現代社会ではデュアルユース技術が普及している。インターネットや衛星利用測位システム(GPS)が好例だ。
制度が助成の対象とする基礎研究は、軍民の区別なくさまざまな分野で応用できる。声明に沿えば、同じ研究テーマでも防衛省が助成すれば軍事目的で、他省庁が助成すれば民生目的となる。研究費の確保に苦労する大学研究者らの選択肢を狭めることにもなり、国立大の男性教授は「学術会議の会員は『上がりポスト』みたいなものだ。研究現場の苦労を理解していない」と批判する。
「声明が日本の安全保障に悪い影響を与えなければいいが。制度の趣旨をなぜ理解してくれないのか」
防衛省担当者はこう嘆く。助成制度は、日本が技術的な優越性を確保して抑止力強化につなげることが目的。国防費を急増させて量的拡大に走る中国に対し、自衛隊は質の優位を保たねばならない。
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110億円という助成制度の額にしても、他国と比較すればなお見劣りする。米国は先端技術の活用で中国やロシアとのパワーバランスを有利に導く「第3の相殺戦略」を進め、2016会計年度は国防総省を中心に約3592億円を計上。オーストラリアも昨年1月に約590億円の基金を創設した。
科学技術政策が専門の有本建男・政策研究大学院大教授は「議論が感情的になっている。学術会議は海外の事例を調査し、デュアルユースの現状も踏まえながら防衛省担当者と議論すべきだ」と警鐘を鳴らす。