2022.8月にかけて、読売新聞やNHK、朝日新聞などで、「日本学術会議は軍事研究を認めた」「いや、認めていない。従来のままだ」という報道が飛び交いました。
正確には、日本学術会議が「我々がデュアルユース研究禁止についての主張は変えていない」は大嘘で、正しくは「論点をすり替えた上で主張を続けている」の間違いです。
2017年声明では、「民生研究と軍事研究は資金の出所で区別できる」として防衛装備庁研究への圧力をかけていました。
しかし、2022.1月ころから突如その「資金の出所」論はは一切消え、「容易とは言えない」と当たり前の現状を追認しています。代わりに出現したのが「研究インテグリティ」という謎の横文字でした。
https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-s243.pdf
↑2017年声明
https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/gakutai/pdf/siryo2506-1.pdf
↑2022.1月分科会資料
また、よく反対派や日本学術会議は、「大学等が自律的に判断する事を求めたのであって、何かを『禁止』したのではない。(学術会議にはそのような権限はない)」と主張しています。
我々は繰り返し主張していますが、日本学術会議に法的権限はなくても、政治的影響力は大きいものがあります。日本学術会議自らが高らかに主張し、最大限利活用しようとている「科学者コミュニティ」なるものの縛りは大きく、学協会や大学へのアナウンス効果は大きいのです。
[軍事的安全保障研究に関する声明] p.1
https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-s243.pdf
1950 年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を、また 1967 年には同じ文言を含む「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発した背景には、科学者コミュニティの戦争協力への反省と、再び同様の事態が生じることへの懸念があった。
近年、再び学術と軍事が接近しつつある中、われわれは、大学等の研究機関における軍事的安全保障研究、すなわち、軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあることをここに確認し、上記2つの声明を継承する。
防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」(2015 年度発足)では、将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家でなく同庁内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い。
↑これだけ悪し様に書かれれば、日本学術会議に忖度する学協会や大学上層部は反応するに決まっています。
いわゆる森友・加計学園で「忖度」と騒いでいた人たちは、これを忖度と言わずして何と仰るのでしょうか?
日本学術会議の卑怯な責任回避の体質は皆さんよくご承知です。自分は言うだけ言って、あとは科学者コミュニティ(学協会・大学)が勝手にやったこと。うちらは知らない。という集団です。
これからも闘っていきます。
また最後になりますが、2017年声明における「政府による研究者への介入の恐れ」は全くのデマです。
防衛研究問題FAQにも書きましたが、改めて以下引用します。
Q2:安全保障技術研究推進制度に応募すると、研究成果は特定秘密になるの?
A2: 安全保障技術研究推進制度の募集要項には、研究成果は特定秘密に指定しないと明記されています。公的資金の募集要項も公的文書であり、防衛装備庁もそこに書かれていることを遵守する義務があります。
Q3:安全保障技術研究推進制度に応募すると、国や自衛隊が研究に介入してきて、監視や介入されたりするの?
A3: 安全保障技術研究推進制度には、プロジェクト・オフィサー(PO)制度というものがあり、防衛装備庁の職員が、採択された研究課題の進捗管理を行います。このPO制度は、他の官公庁系の研究助成金でも広く取り入れられています。
研究課題の中身に関しては、応募した大学の研究者の方が一番の専門家であり、防衛装備庁の担当者の方は、技術的な素養を持っている方であっても、研究課題の専門的な見識は持ち合わせていません。従って、研究をどのように進めるかは、一番の専門家である応募者でしか判断できません。
公募資料によれば、POが介入する場面というのは、研究費の不正使用を防止する場面のみと書かれています。そのことからPOが出来る業務は、会計監査のような業務と思われます。