防衛装備庁研究応募支援

防衛装備庁研究応募支援ページ設置の目的

 防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度への応募を大学上層部に差し止められ、又は自主的取り下げに追い込まれて苦しんでらっしゃる先生方の理論武装の一助となればよいと思い、このページを作成しました。主に学内審査をパスする観点から書きます

 おひとりでも、応募したいという先生のお力添えをさせていただきたい、そういう思いです。

 また、もし個別に研究応募のご相談に乗ってほしい、そのような先生がいらっしゃったら、お気軽にメールでご相談ください。大学教員複数名・弁護士などで構成されるスタッフで出来る限りアドバイスなどさせていただきたいと思います。もちろん秘密は厳守いたします。

以下までメールをください

info★liberty-and-science.org (★を@に変えてください)

 おそらく、多くの大学ではデュアルユース研究、軍事研究なるものに際して、審査制度を設けていると思います。

 審査以前に「絶対お断り」「公式文書には玉虫色の見解を示しているが事実上やんわり応募辞退に持っていく」という大学ですと、かなりハードルが高く、我々も手が出しにくいですが、必ず隙はあるはずです。何とかお手伝いをさせていただきたいと思います。こちらもメールを下されば個別にご相談に乗らせていただきたいと思います。

 まずは学内研究審査の通過が絶対条件になります

また、以下に、反対派や大学上層部への反論の材料をご提供させていただきたいと思います。

各大学の方針への反論

防衛装備庁研究を事実上応募禁止にしている大学にはいくつかの類型があります。

日本学術会議が2017年3月に「軍事的安全保障研究について」という声明を出して以降,各大学で安全保障技術研究推進制度への応募に関して,禁止等の規制を取るようになりました。各大学が出した声明を元に、それら禁止、規制を分類すると以下のようになります。


① 「デュアルユース研究を禁止する」などと宣言している大学


② 「安全保障技術研究推進制度を禁止する」などと宣言している大学


③ 「軍・軍事関係機関からの資金提供による研究」を禁止している大学


④ 「軍事研究(と見なされる研究)、軍事的安全保障研究を禁止もしくは審査する」などと宣言している大学

以下にこれらの措置に関して,矛盾点,問題点を指摘して行きます。


 先ず①の「デュアルユース研究を禁止する.」に関する矛盾点,問題点について述べてみます.既に広く知れ渡っていることですが,現代の科学技術において軍事と非軍事を分けることはもはや不可能です.2022年7月25日に学術会議が小林鷹之科学技術担当相に提出した文書の中でも,軍事用,民生用の技術に分けることはもはや不可能と述べています.実際,ロシアによるウクライナ侵略においても,半導体を始めとする技術や物資のロシアへの輸出が禁止されています.この輸出規制は,半導体のような民生分野でも広く利用されている技術,物資も軍事上,重要な役割を担うために行われています.事実,ロシアでは,戦局が不利になっている一因として,半導体不足を挙げる見解もあります.
 このような状況を踏まえてもなお,デュアルユース研究を禁止するとなれば,全ての科学技術研究を禁止することになります.そういうことは現実には無理でしょう。このような非現実的な禁止宣言は早急に撤回すべきでしょう。

 次に②と③の矛盾点について述べてみます.この2つは本質的には同一の規制内容と言っても差し支えないでしょう.現在,防衛省が出している基礎研究助成は,安全保障技術研究推進制度しかありません.それ以外だと,米軍のDARPAの研究助成も行っていますが,日本では数はあまり多くありません.では,防衛省などの軍関係機関から研究資金を受けることの何が問題になるのでしょうか?軍事研究反対派の意見を調べると次のようなことが挙げられます.
 研究成果が軍事に利用される.
 研究成果が特定秘密に指定されたりして,学会発表,論文発表が制限される.
 研究を進行する上で,防衛省等から介入されて防衛省の要求に従った研究をさせられる.


 科学技術はもはや軍民区別が困難である以上,どんな研究成果も軍事利用の可能性はあります.これは科研費やその他の研究資金による研究でも同様です.そもそも研究成果が軍事利用されるか否かは,当該研究の中身が,軍事上の要求(兵器のスペック,技術的要求)に沿っているかで決まります.仮に安全保障技術研究推進制度に申請した研究が軍事利用されるものであるなら,同じ研究を科研費でやっても研究成果を学会発表,論文発表してしまえば,同様に軍事利用されてしまいます.このように資金の種類は軍事利用の可否を決めるものではなく,学術会議の2017年3月の声明で述べているような,研究成果の軍事利用を防ぐために入口の資金で判断するのはナンセンス以外の何物でもありません.
 研究成果が特定秘密に指定されたり,学会発表,論文発表が制限されたりするという点については,安全保障技術研究推進制度の募集要項に,特定秘密に関する情報は一切与えないし,研究成果を特定秘密に指定することはないと明記しています.そして本制度は学会発表,論文発表を義務付けています.これらの点について,防衛省,防衛装備庁がそのようなことを守るとは限らないという反論もあろうかと思います.しかし募集要項の内容は,防衛装備庁が公式に発表した公的文書であり,応募者との契約内容でもあります.防衛装備庁は自らが出した文書の内容を遵守する義務が発生し,それを破ることは法的な責任が生じるという点を忘れてはいけません.
 研究現場への介入に関しても,防衛装備庁はその募集要項の中で,研究費の不正使用がない限り研究への介入をしないと書いています.この点についても防衛装備庁は法的な責任を伴います.そして最も重要なことは,「誰が」当該研究を考案し、その研究計画を立案したか?という点です.勿論,それは応募した研究者本人です.同時に,応募された研究内容に最も精通した人物も,応募した研究者本人です.基礎研究段階において,研究が工学的に実用できるレベルまで引き上げるには,適切な研究目標,それを達成するための研究計画,及び試験条件を設定する必要があります.こうした研究目標や研究計画,試験条件を立案するには,その研究内容に精通している必要があり,それは応募者本人にしか出来ません.簡単に防衛省が研究活動,方針に介入してくると批判する人はいますが,実際の研究の現場で素人が介入するようなことがあれば,研究が進行するはずもなく期待する研究成果は得られるはずもないのです.防衛省は資金を出すスポンサーです.そのスポンサーが自ら出した資金を無駄にするようなことをするでしょうか?軍事研究に対して反対論を唱える人は,空理空論ではなく現実の研究現場を踏まえた合理的な理由を述べて欲しいものです.

 最後に④の「軍事研究(と見なされる研究)、軍事的安全保障研究を禁止もしくは審査する」という規制ですが,これは例の学術会議の軍事的安全保障研究についての声明の中にある,「軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について,その適切性を目的,方法,応用の妥当性の観点から技術的,倫理的に審査する制度を設けるべきである」と述べたことに起因しています.当会では上記4つの中でこれが最も危険な規制であると考えています.まず軍事研究と見なされる研究,軍事的安全保障研究というのは,どういう研究を指すのでしょうか?この定義が分かりません.
 この定義が定まらないまま学術会議の声明に従って規制制度を作ってしまうと,たとえ防衛装備庁から資金を受けていなくても,軍事研究と見なされる研究であれば,禁止されたり,研究内容を審査されたりする可能性があります.軍事研究反対論の中には,「軍事研究をやれば,研究内容に防衛省の介入を招く」という批判するものもある一方で,「軍事研究反対」という名目で他人の研究内容に介入し,研究者の意図せぬ研究計画の変更を強要することもあり得ます.「軍事研究,軍事的安全保障研究」の定義が明確でない以上,いつ、どの研究が槍玉に上がって研究禁止や研究内容への介入が行われるか分かりません.
 最近,ある国会議員がジェンダー研究を行っている研究者に対し,誹謗中傷をやったり,「国益を損ねる研究に科研費を助成することは問題だ」と発言したりしたことがありました.これは裁判にまで発展しました.当会はジェンダー研究の中身を把握はしておりませんが,ジェンダー研究者がその学術的見地から,同分野の研究を深めることは正当な学術研究の範疇だと考えております.この国会議員のように独りよがりな主張に基づいて,研究の是非を断ずるなど憲法が保障する学問の自由を侵害する行為と考えます.
 「軍事研究(と見なされる研究)」に対する審査や禁止する制度もまた,独りよがりな主張に基づいて,研究の是非を断ずる行為で,学問の自由を侵害する行為に他なりません.そしてこれは軍事研究反対派が唱える「研究倫理」による規制でもありません.研究倫理で規制される研究は,人命や環境に重大な影響を与える研究,個人情報の保護が適切でない研究などは,研究方法や研究計画の見直しが求められたり,研究の実施が禁止されたりします.しかし④の規制対象となる研究は,軍事的安全保障研究と見なされる「可能性のある」研究で,その区別基準は明確ではないのです.そのため審査や判断に恣意的,政治的な意図が入り込む危険性がかなり高いと考えています.

変わりつつある大学

ある大学では、複数の先生方が防衛装備庁への応募を希望する声が高まったため、大学執行部が応募容認に転じる動きを見せているそうです。

先生方が声を上げれば、必ずや執行部もその声を無視できず容認に転じることが出来ます。当会としても最大限応援させていただきます!

非常に研究者にとって自由な 安全保障技術研究推進制度

安全保障技術研究推進制度は受託研究(委託研究)です。競争的資金(グラント)と受託研究(委託研究)の違いにつきまして。
防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度は、研究分野をある程度指定しているものの、NEDOや総務省に比べると格段に自由度が高く、事実上グラントに近い助成金です。
https://e-grant.jp/whats_grant.jsp

政府系の競争的資金のうち受託研究として、NEDO等の公募があります。一般的に受託研究は研究テーマが事細かく指定されており、その内容に沿った研究提案をする必要があります。受託研究の一例として、総務省の高度通信・放送研究開発委託研究を紹介しておきます。
本当に研究内容が細かく指定されていることが分かると思います。
https://www.nict.go.jp/collabo/commission/20211014kobo.html
https://www2.nict.go.jp/commission/keikaku/r03/225_keikaku.pdf

現場の研究者の感覚では、安全保障技術研究推進制度のテーマはあまりにも自由度が高過ぎて、「これが受託研究?」と疑問を持つレベルです。
確かに理工系分野で水中通信、AI、量子コンピュータ等と技術分野はある程度指定していますが、AIなら何でも良い、量子技術なら何でも良い、というレベルです。
該当する研究者にしてみれば、科研費並みの自由度です。

令和3年度の安全保障技術研究推進制度の募集テーマを例に挙げて説明します。
https://www.mod.go.jp/atla/funding/koubo/r03/r03koubo_full_v2.pdf

p.51 (18)の先進的な計測技術に関するものでは、エンジンの燃焼を計測するものなのか、極低温を対象にしているのか、風向、風速を対象にしているのか、どれを対象にしているのか定まっていません。そして先進的な計測技術、センサーについて募集しますとだけ書いてあります。

p.55 (27)の高周波デバイス、回路に関する研究では、前半の8割を現状の研究状況について述べています。そして、「現状の問題点や課題を分析した上で」基礎研究を募集しています。これは研究の問題点、課題を防衛装備庁側から出さずに、応募者自身が課題を設定して、その解決アプローチを提案するように求めています。高周波デバイス、回路という分野は設定しているものの、その中の課題は応募者自身が自由に提案してくることを求めています。

p.54 (25)の測位・航法に関する基礎研究は、これはある程度、応募提案にある程度、縛りを入れています。それは、1) GPSといった外部のシステムからの情報に依存しないこと、2)多数のマーカーを設置する必要がないこと という条件を課しています。原子干渉計や複合航法といった技術がそれらの要求条件を満たしていますが、原子干渉でも、複合航法でもどちらでも良いとも読めます。(原子干渉計と複合航法は全く別物)

以上のように、防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度は研究者にとって非常に自由度の高い制度なのです。

「軍事研究」の定義とは??

軍事研究の定義ですが、これがまたあやふやでしばしば混乱させてしまいます。ただ日本学術会議は軍事研究の定義として以下の3つを挙げています。

1)軍事利用(兵器、軍事上必要な機器の開発)を目的とした研究


2)軍・防衛省関係の機関から資金援助を受けた研究


3)軍事利用の可能性がある研究

このうち3)に関しては、日本学術会議自身も適用範囲が難しく注意を要すると言っています。3)を軍事研究の定義に含めるのは危険だと思います。

1)に関しては確かにこれは軍事研究と言う事に異論はないでしょう。
2)に関しては、私は軍事研究に入れても入れなくてもどちらでも良いと考えています。但し2)の研究がダメだと言うなら、その根拠を明確にする必要があります。もし2)の研究がダメな理由が、軍事利用を目的にするものなら、その研究は1)のカテゴリに入れなくてはなりません。

そして、軍事研究というのは
1)軍事利用(兵器、軍事上必要な機器の開発)を目的とした研究、というのが定義になろうかと思います。民生利用か軍事利用かを問う場合、「軍事利用を目的としているか?」が判断の決め手になろうかと思います。ここで重要なことは、もし、安全保障技術研究推進制度の研究が軍事利用を目的とする研究であるなら、当然、試験研究の計画、試験実施条件は開発する兵器の仕様、開発計画に則ったものになるはずです。試験計画は開発する実機(兵器)の性能、仕様から与えられるはずです。「将来の防衛装備品の開発に資することを期待し・・・」みたいな一文で決まるものではありません。ところが安全保障技術研究推進制度は先述の通り、理工系分野で水中通信、AI、量子コンピュータ等と技術分野はある程度指定していますが、非常に自由度の高いものです。実際の兵器開発を目的としているなら、ハッキリ開発計画に則った厳密な計画を示してくるはずですが、非常に自由度が高く兵器開発目的とは呼べないものです。
とても 1)に含めることは困難です。

反論:①資金の出所で判断すべきだから防衛装備庁は軍事研究であり禁止だ、防衛装備庁だから軍事利用される

 技術のデュアルユースという情勢のなか、技術内容ではなく資金の出所(軍事機関か否か)で判断すべきという意見が多いようです。日本学術会議声明にもそのような記述があります。

 しかし、民生技術とされているものでも軍事転用することは十分可能であり、現に日本の民生品が海外に輸出され軍事転用された例は枚挙にいとまがありません。

 国内外における兵器開発は、その国の安全保障環境により、兵器の仕様・性能を決定し、技術的・経済的な側面から技術を集めたうえで、基礎技術の上に応用研究、実証研究に進むものです。
 つまり、純粋に科学技術の問題であり、その際に使用される基礎研究技術に資金の出所区別はありません。

 もし応募に際して審査が必要というのであれば、兵器開発の専門家に委託でもしないことには困難で、大学内での議論だけでは難しいと思われます。

 研究の軍事利用というのならば、それこそ外国人留学生の機微技術に係る研究室への配属や入学許可といった総合的な議論を学内で尽くすべきですし、また継続的に行うべきです。

また、安全保障技術研究推進制度を利用した研究成果はすでに世に出ていますが、他の科研費等の研究と見比べてみても、なんら特別なところがないことは、以下のプレスリリースを見ていただければお分かりになるかと思います。


https://research-er.jp/articles/view/82119


https://research-er.jp/articles/view/63470


https://research-er.jp/articles/view/73568

反論:②今後も防衛装備庁に協力を強要される、国に介入される、成果は非公開にさせられる

日本学術会議声明の中では、安全保障技術研究推進制度について論文公開できない等の記載がありましたが、これは事実に反しています。


https://www.mod.go.jp/atla/funding/koubo/r03/r3koubo_setsumei_shiryo.pdf

上記防衛装備庁の案内4ページにもありますが、
「どのような内容で応募するかは研究者の自由」
「公表に制限なし」
「研究委託であり補助金ではない」
「研究委託を行ったことで、将来防衛装備庁が行う研究開発への参加を強制されるものではない」
「基礎研究を求める・・・応用的研究や開発は対象外」

同14ページには、「研究は研究者ご自身のお考えで自主的自律的に行っていただく」
「プログラムオフィサーが研究に介入することはありません」
など、他の研究助成制度とまったく変わらない内容です。

反論:③「日本学術会議は防衛装備庁研究、デュアルユース研究を禁止している」

日本学術会議は防衛装備庁研究禁止する意図はない、デュアルユース研究を禁止するつもりはない。と明言しました。

 有村治子参議院議員の国会質問(2022.4.26)に対し、日本学術会議事務局長は「(2017年の軍事研究禁止声明は)日本学術会議は一律にデュアルユース研究禁止をするものではない。」「H29年3月の第11回会議の議事録にもあり、当時委員長の発言にもあるが、『防衛装備庁だから一切受けるなとかいう意図はない』と記録されている。声明は何かを禁止するなどの意図はございません。」という重要な発言をしました。

国会の議事録に残されており、言い逃れはできません。

【日本学術会議が防衛装備庁研究・デュアルユース研究を容認】に記載

また、2017年声明では、「民生研究と軍事研究は資金の出所で区別できる」として防衛装備庁研究への圧力をかけていました。
しかし、2022.1月分科会資料から突如その「資金の出所」論は姿を消しました。

2017年軍事研究禁止声明では「・・研究成果は、時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的な目的のためにも使用されうるため、まずは研究の入り口で研究資金の出所等に関する慎重な判断が求められる。・・」(声明p.1)と宣言し、「(軍事・民生を)資金の出所で判断できる」と言い切っていました。

しかし下記資料では資金の出所に関する記述は一切消え、「容易とは言えない」と当たり前の現状を追認しています。

科学者コミュニティからの研究インテグリティに関する論点整理(2022.1 日本学術会議 科学者委員会 学術体制分科会)

仮に基礎研究と認められる場合であっても、研究者の意図しない用途への転用可能性を排除することはできない。
したがって、科学技術そのものを潜在的な転用可能性に応じて評価することはもはや容易とは言えず

「資金元が防衛装備庁だから」という論拠は、日本学術会議によって梯子を外された格好です。

以上、簡単に書きましたが、これが先生方の研究申請の一助となり、非力ながらお背中を押せれば幸いです。今後、加筆訂正を加えていきます。