変化した日本学術会議の主張 & 軍事研究禁止声明・二匹目のドジョウ「研究インテグリティ」

代表です。台風14号の被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

twitterでは告知したのですが、岩波書店の「世界 2022.10月号」に小森田秋夫氏の「日本学術会議は見解を変えたのか」という記事が寄稿されていたので読んでみました。

https://www.iwanami.co.jp/book/b612987.html

◇日本学術会議は見解を変えたのか 小森田秋夫
小森田秋夫・東大名誉教授は、任命拒否問題の著書があり、元・民主主義科学者協会法律部会理事というお察しの人物です。

「世界 2022.10月号」および怪しい「研究インテグリティ」を解読してみました

以下に詳述しますが、「世界 2022.10月号」および「研究インテグリティ」を通読したうえで感じた重大ポイントは2点です。

1.日本学術会議が「我々がデュアルユース研究禁止についての主張は変えていない」は大嘘で、正しくは「論点をすり替えた上で主張を続けている」の間違いです。

2.「研究インテグリティ」という横文字を拡大解釈して余計な定義を切り張りし、防衛装備庁だけでなく、経済安全保障重要技術育成プログラムまで何とか食い止めようとする意図が見え見えです。2017年軍事研究禁止声明の二匹目のドジョウ狙いで、学協会や大学にガイドラインの策定を求めています。

https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/gakutai/pdf/ronten25-1.pdf

↑研究インテグリティ

まず「世界」から読んでいきます。

①p.17上段l.1の「軍事的安全保障研究では研究の期間内および期間後に、研究の方向性や秘密性の保持を巡って、政府による研究者の活動への介入が強まる懸念があるとしたのである」は我々が繰り返し言っていますが、完全なデマです。

②p.17上段l.18の「『まずは(カッコ内筆者註:2017年声明において防衛装備庁という研究資金の)『入口』において慎重な判断を行うことが求められる』という文について。

「資金の出所で軍事・民生研究は区別できる!」と日本学術会議は2017年声明では高らかに謳っていましたが、2022年1月の分科会資料p.1には全く出てこず、コッソリと撤回し、代わりに研究インテグリティという言葉を唐突に用いています。明らかに論点のすり替えです。

https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/gakutai/pdf/siryo2506-1.pdf

p1-l.22「基礎研究(Basic Research)と応用研究(Applied Research)を明確に分かつのは困難であり、仮に基礎研究と認められる場合であっても、研究者の意図しない用途への転用可能性を排除することはできない[7]。したがって、科学技術そのものを潜在的な転用可能性に応じて評価することはもはや容易とは言えず、より広範な観点から研究者及び大学等研究機関がそれを適切に管理することが求められているが、後述するように、そこにはいくつもの課題が存在する。このような問題に対処するための一つの考え方が、研究インテグリティ概念の拡張である」

冒頭に述べた重要ポイント1.「日本学術会議が『我々がデュアルユース研究禁止についての主張は変えていない』は大嘘で、正しくは『論点をすり替えた上で主張を続けている』」とはここです

③p.17中段l.13 「大学等が自律的に判断する事を求めたのであって、何かを『禁止』したのではない。(学術会議にはそのような権限はない)」と書いています。
これも繰り返し主張していますが、日本学術会議に法的権限はなくても、政治的影響力は大きいものがあります。日本学術会議自らが高らかに主張し、最大限利活用しようとている「科学者コミュニティ」なるものの縛りは大きく、学協会や大学へのアナウンス効果は大きいのです。

[軍事的安全保障研究に関する声明] p.1


https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-s243.pdf

1950 年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を、また 1967 年には同じ文言を含む「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発した背景には、科学者コミュニティの戦争協力への反省と、再び同様の事態が生じることへの懸念があった。
近年、再び学術と軍事が接近しつつある中、われわれは、大学等の研究機関における軍事的安全保障研究、すなわち、軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあることをここに確認し、上記2つの声明を継承する。

防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」(2015 年度発足)では、将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家でなく同庁内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い。

↑これだけ悪し様に書かれれば、日本学術会議に忖度する学協会や大学上層部は反応するに決まっています。
いわゆる森友・加計学園で「忖度」と騒いでいた人たちは、これを忖度と言わずして何と仰るのでしょうか?

日本学術会議の卑怯な責任回避の体質は皆さんよくご承知です。自分は言うだけ言って、あとは科学者コミュニティ(学協会・大学)が勝手にやったこと。うちらは知らない。という輩です。

④p.18上段l.2。「特に経済安全保障の観点が急速にクローズアップされる中で、『先端的な重要技術』について情報の適切な管理と研究成果の公開の両立を図ることが求められている」
同じく上段l.7。「経済安全保障論と重なる状況認識・課題意識を持ちながらも、(中略)学問の自由・研究の自律性を守るという視点から科学者コミュニティが主体的・自律的に対応することがより重視されている」

要は、学問の自由だの、科学者コミュニティだのという美名を使って、防衛装備庁や経済安全保障重要技術育成プログラムについて足止めをさせようという意図がみて取れます。

⑤p.19下段l.7【当面の課題と構造的問題】と称して、「科学者コミュニティは『論点整理』を受け止め、これを議論の手掛かりとすべきであろう」

ようは、経済安全保障重要技術育成プログラムについても、2017年声明同様に学協会・大学でバラバラに規制をさせるつもりです。もちろん日本学術会議は一切責任を取りません。だって、科学者コミュニティが勝手にやったことだから。

⑥p.6-下段l.6「(カッコ内筆者註:2017年声明は)その趣旨が正確に理解されていない場合が少なくない。」
2017年声明は誤解されてると書いてます。今更遅いしふざけてます。言い訳にしても下手すぎる。
誤解されるような玉虫色の公式文書を公的機関が発出すること自体おかしいし、玉虫色を悪用してきたのです。
2017年声明は難解な宗教の経典かなにかでしょうか?

小森田氏の「世界」の記事の次に、研究インテグリティについて解読します

https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/gakutai/pdf/ronten25-1.pdf

①p.7-l.6
(4)研究インテグリティの定義と目的、ステークホルダーの役割分担と連携本論点整理においては、これまでの議論を参考として、特に研究現場からの視点に留意して、改めて研究インテグリティを、これまで政府等で議論されてきた定義よりも幅広く、その運用面まで含めて「研究活動のオープン化、国際化が進展する中で、科学者コミュニティが、資金や環境、信頼等の社会的負託を受けて行う研究活動において、自主的・自律的に担保すべき健全性と公正性及び、そのための、透明性や説明責任に関するマネジメント」と定義する。

②p.7-l.15
特に政治的、国際的問題から学問の自由を守り、研究の自律性を確保する点にある。特に経済安全保障の観点が急速にクローズアップされる中で、「先端的な重要技術」について情報の適切な管理と研究成果の公開の両立を図ることが求められている。

③p.7-l.28
したがって、研究者・大学等研究機関には、ステークホルダーとの連携の下で、その利益相反ならびに責務相反マネジメントを実施することが必須となる。

④p.7-l.31
(5)ガイドライン
研究インテグリティに関わるガイドラインの目的は、我が国の大学等研究機関が諸外国との連携を損なうことなく、研究インテグリティを維持し、かつそのリスクに対するレジリエンスを高めることにある。特にそれは各機関の理念等に配慮したものでなければならず、したがってその策定に際してもそれぞれの主体性がもとめられることになる。以下に、ガイドラインの策定・運用に当たり、留意すべきポイントを列記する。なお、これらは大学等研究機関に新たな大きな負荷を強い得るものである

小森田氏の主張を裏付けるように、非常にわかりにくく「ガイドラインの策定」を求めています。

冒頭の重要ポイント2.「『研究インテグリティ』という横文字を拡大解釈して余計な定義を切り張りし、防衛装備庁だけでなく、経済安全保障重要技術育成プログラムまで何とか食い止めようとする意図が見え見えです。2017年軍事研究禁止声明の二匹目のドジョウ狙いで、学協会や大学にガイドラインの策定を求めています。」はここです。

気になったのは主に以上のようなところです。

玉虫色ですが、日本学術会議の研究インテグリティは小森田氏の文章と同じようなものです。
難しい小理屈をこねてますが、デュアルユース研究に対する政治的信条と言う立派なものではなく、単なる個人的な生理的嫌悪感です。「デュアルユース研究・経済安全保障なんて嫌いだ。留学生とか、国外のステークホルダーとか、研究の自律性とか、学問の自由とか、なんでもくっつけて、デュアルユース研究を妨害しよう。研究者に個人の学問の自由は認めない。科学者コミュニティで縛りつければいい。」それが本音です。

小森田氏は日本学術会議とツーツーでしょう。
日本学術会議の研究インテグリティだけではよくわからない文章でしたが、ご丁寧に小森田氏が隠された意図も含めて分かりやすく補筆してくれた感じですね。小森田氏には感謝申し上げます。

再度「研究インテグリティ」についてのポイントを纏めます。

1.日本学術会議が「我々がデュアルユース研究禁止についての主張は変えていない」は大嘘で、正しくは「論点をすり替えた上で主張を続けている」の間違いです。

2.「研究インテグリティ」という横文字を拡大解釈して余計な定義を切り張りし、防衛装備庁だけでなく、経済安全保障重要技術育成プログラムまで何とか食い止めようとする意図が見え見えです。2017年軍事研究禁止声明の二匹目のドジョウ狙いで、学協会や大学にガイドラインの策定を求めています。

日本学術会議は「研究インテグリティ」において、「国内外のステークホルダー」だの「科学者コミュニティ」だの美辞麗句を多用して、研究に縛りをかけようとしています。
法律や大学の経営方針だけでなく、なんで「科学者コミュニティ」なる奇怪なものに縛られなければならないのか?現場の研究者にとって非常に迷惑な話です。

長文になりました。闘いは新たなフェーズに入りました。日本学術会議・反対派が防衛装備庁研究だけでなく、経済安全保障重要技術育成プログラムについても焦って規制をかけようとしていること、そしてへたくそな言い訳を乱発していること。

今後も闘っていきます。
日本の学問の自由と平和のため、日本の将来を担う若者・子供やまだ生まれてきていないその子供も含めて、安心できる平和で豊かな日本国を作るため、負けるわけにはいきません。
そう決意を新たにいたしました。

今後ともよろしくお願いいたします。

本当は色々水面下で動いておりますが、皆様方にご報告できるのはおそらくあと数か月かかるかと思います。

また末筆で大変恐縮で有り、本当は真っ先に書かねばならないのですが、ウクライナの国民に一日も早い平和と自由がもたらされますよう、ただただ祈るばかりです。

Україна назавжди вільна !

ウクライナは永遠に自由です!

代表

***私たちの仲間にようこそ!心より感謝申し上げます! 

2017年2月12日に活動開始しまして5年半以上が経過しました。

大学署名累計4,693筆(前々回8/26配信から14筆追加)、日本学術会議署名で累計5,453筆(前回9/3配信から5筆追加)のご署名がありました。

新規にご署名くださった方々、ありがとうございました。ともに戦ってまいりましょう。今年も増やしてまいります!

①「すべての大学は、防衛研究(軍事研究)の自由を保障してください」 
 
https://www.change.org/Daigaku_Bouei_Kenkyu

②「日本学術会議は防衛研究(軍事研究)禁止声明を撤廃、ガイドライン・倫理規定・審査規定の策定を中止し、全大学に防衛研究の自由を保証するよう勧告してください」

https://www.change.org/Gakujutsukaigi_Bouei_Kenkyu

自由と科学の会  防衛研究の自由を求めます!

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