経済安全保障

日本経済新聞にて日米欧から中国への技術流出特集

(抜粋)中国の人民解放軍の関係者が、日米欧の大学や企業との学術連携に紛れ込んでいる実態がわかってきた。狙いは軍事転用が可能な「機微技術」だ。日本経済新聞が国際論文データベースを分析したところ、過去5年間で合計473件の先端分野の共同研究に軍関係者が加わっていた。民間研究を国防分野に積極的に取り入れる中国とどう向き合っていくのか、揺れるアカデミアの世界を追った。

https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/china-research-battle/

(2022.6.15付け日本経済新聞・有料会員限定)

内容は言葉を失うものでした。日本ももちろんですが、むしろ米英加などの先進国から身分を偽った、中国人研究者による共同研究の手口です。
「西安人民解放軍火箭(ロケット)軍工程大学」を共著相手には「High Tech Institute of Xian」としか名乗らない実例
「日本の大学は対策が遅い原因の一つに、日本は軍事研究をしないということなので逆に自分の専門の軍事転用の可能性についての意識が低い」
等という内容です。
どうかご覧になってください。(2022.6.18)

経済安全保障推進法

2022年1月から開会の通常国会で、経済安全保障推進法案が提出されます。

サプライチェーン強靭化、基幹インフラ強化、特許非公開化、官民技術協力の4つです。
遅かったかもしれませんが、ようやくここまで来ました。
自由な大学の研究や留学生など学術交流、自由な経済活動への束縛という側面も孕んでいますが、政府はしっかり企業や大学をケアし、国民の安心安全の観点から経済安全保障政策を推し進めていただきたいと思います。

特許非公開化など4本柱に 経済安保法案提出へ 2022年01月14日 時事通信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022011300821

経済安全保障についても、Youtube動画にしております。併せてご視聴ください

重要技術研究開発協議会 ・経済安全保障基金

経済安全保障政策に絡み、政府は2021年度で2,500億円、将来的に5,000億円の経済安全保障基金を創設し、内閣府・防衛省・文科省や研究者など含めた官民協議会を設立することとなりました。読売新聞の報道です。

【独自】先端技術育成、研究者公募し官民協議会…経済安保で「けた違い」の資金 2022/01/13 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220112-OYT1T50285/

政府が新設するのは「重要技術研究開発協議会」(仮称)。国家安全保障局(NSS)や内閣府、防衛省、文部科学省など関係省庁幹部と研究者がテーマごとに意見交換しつつ重要技術の開発を進めるとの事です。また同協議会は政府が2023年度に創設する経済安全保障に関する調査研究機関からも助言を受ける方向との事です。

この5,000億円の基金に大学や研究機関の研究者が加わることが出来、実際に研究開発をすることが出来るのか?その辺の情報はまだわかりませんが、我々の目的である防衛装備庁・安全保障技術研究推進制度は年間100億円ですから、まさに桁違い(それでも欧米や中国とは明らかに見劣りするのでしょうけれど)の研究資金が動くことになります。

下記項目「経済安全保障重要技術育成プログラム」という経産省・文科省などが出資するデュアルユースの100億円の研究基金とはまた別個の制度の様です。

「重要技術研究開発協議会」と昨年8月報道された「経済安全保障重要技術育成プログラム」の関連・位置づけはまだ情報が乏しくわかっていません。
しかし我々の活動に大きな影響があるのは間違いありません。
いずれにしても、防衛装備庁はもちろん、これらの制度に大学研究者が加わることに対し、日本学術会議や反対派が妨害する事の無いよう、こちらとしても監視をしていきたいと思います。

経済安全保障重要技術育成プログラム

従来の防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度だけでなく、2022年度から、文科省・内閣府からデュアルユース研究新制度?が発足するようです。
名前は「経済安全保障重要技術育成プログラム」というようで、来年度予算に100億円計上とのことです。

何とも詳細はまだわかりませんが、防衛装備庁とは別に、デュアルユース研究の研究助成制度?発足となれば、我々の戦いが根本から変わります。
大学・研究機関によって対応は変わっていますが、「防衛装備庁研究は禁止する」という方針を明文化している大学機関ならば、理屈的には文科省・内閣府からの助成金ならOKのはずです。
また、日本学術会議の禁止声明でもハッキリと「防衛装備庁の研究」云々と書いております。抜け道になります。
防衛装備庁研究助成金・安全保障技術研究推進制度が受けられず困っている先生方には大きな福音になります。

もちろん、反対派も手を拱いているはずがなく、反対運動を展開するはずで、我々も対抗しなければなりません。

忙しくなります。

**以下引用**

軍民利用の先端技術、実用化へ100億円規模を概算要求
2021年8月27日 16時30分 朝日新聞 (読者でなくても全文閲覧可能)

https://www.asahi.com/articles/ASP8V4VWMP8VULBJ009.html

 政府は、量子コンピューターや人工知能(AI)など、軍民いずれにも使える先端技術の実用化を推進する新事業に取り組む。内閣府や文部科学省などが来年度の政府予算で、計100億円規模の概算要求をする。技術流出を防ぐ対策など管理体制も強化する。

 新設するのは「経済安全保障重要技術育成プログラム」。AIや量子技術、ロボット、サイバーセキュリティー、極超音速技術など、軍民が利用できる「デュアルユース」の技術を対象にするとみられる。(以下略)

**引用以上**

日米両政府「現代版COCOM」

日米両政府が、現代版COCOM(旧・対共産圏輸出規制委員会)とも言える、先端技術の輸出を規制する新たな枠組み作りを検討していることが明らかになりました。

【独自】対中国「現代版ココム」に発展も…先端技術の輸出規制で日米が新たな枠組み検討 2022/01/10 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220109-OYT1T50112/

詳細は上記記事をお読みいただければと思います。

2021年頃から、経済安全保障に関する情報がとにかく多数飛び交っており、追いきれません。
防衛装備庁の研究と経済安全保障は深いつながりがあり、防衛装備庁研究が政府の経済安全保障体制にどう組み込まれていくのか、非常に強い関心を持っております。

2020年の一連の経済安全保障、千人計画に関する読売新聞取材をまとめ、最近のトピックを追加した本が出版されました。

どうぞご購入してみてください。

「中国『見えない侵略』を可視化する」(新潮新書・読売新聞取材班著)

(2020.8.20)

2020年5月開始の読売新聞「経済安保(千人計画関連含む)」特集にはじまり、2021年も立て続けに政府の技術流出防止政策が打ち出されています。

大学の防衛研究と、先端技術の輸出管理・流出防止は表裏一体ですので、当会としても目が離せません。
報道記事も多いので、まとめたページを作りました。(2021.6.13)

昨年から今年にかけての大まかな流れとして

①2020年5月頃~2021年4月頃
主に読売新聞などが経済安保、千人計画についての記事を掲載し、世論喚起となる。
国家安全保障局内の経済班設立など、日本政府の動きも見られだす。

②2021年4月頃~2021年6月頃
米中対立、6/11~13のG7に向けてか、政府の動きが加速する。

・4/27 日本版DARPA(経済安保に関する新たな調査機関)を2023年度中に設立の報道がされる(産経、読売など)

・4/27 4/27実施の政府の統合イノベーション戦略推進会議で以下が決定される(読売、日経など))
 ▽研究者は、海外を含む全ての研究資金の応募・受け入れ状況を開示
 ▽研究者は、外国の人材登用プログラムを含む全ての所属組織と役職を申告
 ▽虚偽申告には、研究費返還や助成制度への応募制限などの措置
 ▽政府は、公的な研究費に関する指針を年内の早期に改定

・5/20 留学生の「半年居住」問題(先端技術を扱う大学・企業関係者では公知の事実)という外為法の不備および、政府が対策強化に乗り出す旨が報道される。(読売)

・6/2 政府が先端技術輸出規制迅速化の国際的枠組み策定に取り組む。AI、ロボティクス、バイオ、量子コンピュータなども対象。(日経)

・6/6 政府が、外国の強い影響下にある留学生や日本人研究者への技術提供を経産省の許可制とする方針を固めた。(読売)

・6/9 政府が経済財政諮問会議の「骨太の方針」にて原案を示した。外国の強い影響下にある留学生や日本人からの技術流出防止など。(読売、産経など)

・6/9 6/11~13英国にて開催のG7で各国は研究データの流出を防ぐための共通指針の策定で合意する。
    分野は人工知能(AI)や量子といった軍事転用が可能な先端技術などに限って検討。

 以下に、ソースを含めた記事のリンクを貼っております。

経済安保、技術流出防止についての政府の政策


最新の記事を上に、古い記事を下に掲載しております。ご注意ください。

G7、研究データ流出防止 指針策定で合意へ
中国念頭、軍事転用を警戒

2021年6月9日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72716620Z00C21A6MM8000/
6/11~13英国にて開催のG7で各国は研究データの流出を防ぐための共通指針の策定で合意する。分野は人工知能(AI)や量子といった軍事転用が可能な先端技術などに限って検討

骨太原案、次世代成長へ基盤構築 経済安保 技術流出防止を強化
2021/6/9 産経新聞
https://www.sankei.com/article/20210609-Q2NISEYCBZIQLL73FEAWD3SW6E/
政府が経済財政諮問会議の「骨太の方針」にて原案を示した。外国の強い影響下にある留学生や日本人からの技術流出防止など

【独自】安保技術の提供、許可制に…外国の「強い影響下」にある日本人研究者も対象
2021/06/06 読売新聞(非読者会員でも全文閲覧可能)
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210605-OYT1T50236/
政府が、外国の強い影響下にある留学生や日本人研究者への技術提供を経産省の許可制とする方針を固めた

先端技術 輸出規制迅速に
日米欧で協議枠組み 半導体・AI、軍事転用防ぐ

2021年6月2日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72498130R00C21A6EP0000/
政府が先端技術輸出規制迅速化の国際的枠組み策定に取り組む。AI、ロボティクス、バイオ、量子コンピュータなども対象

【独自】技術流出対策に「抜け穴」あり…中国を念頭、留学生らの移転規制強化へ
2021/05/20 読売新聞(非読者会員でも全文閲覧可能)
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210519-OYT1T50327/
留学生の「半年居住」問題(先端技術を扱う大学・企業関係者では公知の事実)という外為法の不備および、政府が対策強化に乗り出す

【独自】海外研究資金の透明化…政府方針きょう決定 技術流出阻止
2021/04/27 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210426-OYT1T50262/

4/27実施の政府の統合イノベーション戦略推進会議で以下が決定される
 ▽研究者は、海外を含む全ての研究資金の応募・受け入れ状況を開示
 ▽研究者は、外国の人材登用プログラムを含む全ての所属組織と役職を申告
 ▽虚偽申告には、研究費返還や助成制度への応募制限などの措置
 ▽政府は、公的な研究費に関する指針を年内の早期に改定

日本版DARPA(?)設立 !?
日本版DARPA(?)とも呼べるような、経済安保政策の司令塔となるシンクタンク組織を政府が2023年度内に立ち上げるとの報道がありました。

経済安保調査組織を新設へ 政府、令和5年度めど 先端技術流出防ぐ
2021.4.27 産経新聞(全文閲覧可能)
https://www.sankei.com/life/news/210427/lif2104270043-n1.html

経済安保研究へ新機関創設へ…民生にも軍事にも活用できる先端技術強化
2021.4.27 読売新聞 (非読者会員でも一部閲覧可能)
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210426-OYT1T50269/

「経済安全保障に関する新たな調査研究機関を2023年度をメドに創設する方針を固めた。米国防総省の研究部門「国防高等研究計画局」(DARPAダーパ)を念頭に、民生にも軍事にも活用できる「デュアルユース」(両用)の先端技術について、政府直轄で研究を強化したい考え」(読売新聞)とのことです。

デュアルユースの科学技術研究の進展に、大いに期待したいと思います。

一連の経済安保、千人計画などに関する報道

最新の記事を上に、古い記事を下に掲載しております。ご注意ください。

研究者の中国「千人計画」参加、国立大の3割が把握せず…政府指針がないことなど理由 (読売新聞2021/4/17) 
※公開記事ですのでどなたでも読めます
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210417-OYT1T50298/

この記事の驚くところは、回答した国立大学の31%が把握していない事ではなく、むしろ58%が把握して、つまり黙認していたということです。
経済安全保障の観点から、政府には今後さらなる規制強化をお願いしたいところです。

【独自】中国「千人計画」に日本人、政府が規制強化へ…研究者44人を確認  読売新聞  2021/1/1
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20201231-OYT1T50192/
公開記事ですので誰でも読めます。

政官民でコロナ後に備え 激化する米中覇権争い
経済安保政策を追う(下) 
 2020/6/5
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60005340U0A600C2EE8000/

狙われる先端技術 ロボットやバイオ、買収阻止
経済安保政策を追う(中)
 
2020年6月4日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59944600T00C20A6EE8000/
↑大学での先端技術の流出について書いています

省庁越え政策練る「経済班」 コロナや技術流出に対処
経済安保政策を追う(上)  

日本経済新聞 2020/6/3
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59899990S0A600C2EE8000/

[安保60年]第2部 経済安全保障<9>機微技術 把握・防御急ぐ…自民党税調会長 甘利明氏
読売新聞全国版 2020/05/17 05:00
貼り付け元 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200516-OYT1T50267/

【独自】日米 経済安保で対話 枠組み新設へ…先端技術管理を協議
読売新聞全国版  2020/05/16 05:00
貼り付け元 https://www.yomiuri.co.jp/economy/20200516-OYT1T50065/

[安保60年]第2部 経済安全保障<8>縦割り打破の「経済班」
読売新聞全国版 2020/05/16 05:00
貼り付け元 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200516-OYT1T50092/

[安保60年]第2部 経済安全保障<7>防衛研究阻む学術会議…予算に影響力 民間活用停滞
読売新聞全国版 2020/05/14 05:00
貼り付け元 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200514-OYT1T50119/

[安保60年]第2部 経済安全保障<2>ファーウェイ、大学の技術に触手
読売新聞全国版 2020/05/05 08:43
貼り付け元 https://www.yomiuri.co.jp/economy/20200504-OYT1T50168/

[安保60年]第2部 経済安全保障<1>技術狙う中国「千人計画」
読売新聞全国版 2020/05/04 09:48
貼り付け元 https://www.yomiuri.co.jp/economy/20200504-OYT1T50008/