メディア掲載

最終更新日: 7月 28, 2020 @ 2:16 午後

防衛研究に肯定的な報道記事

下記 2020.5.14付け 読売新聞記事「経済安全保障(7) 防衛研究阻む学術会議…予算に影響力 民間活用停滞」について、読売新聞記者から3月下旬に代表とスタッフ(大学教員、メレディス)計3名が取材を受けました。(当該記事には当会の名前はありませんが、意見の一部は反映されています)※記事中にある東京大学の先生は、スタッフとは別人です。

以下6本の読売新聞の記事は、読売新聞社との許諾契約のもとに公開します。

[安保60年]第2部 経済安全保障<1>技術狙う中国「千人計画」

読売新聞全国版 2020/05/04 09:48

内閣官房の国家安全保障局に4月1日、経済安全保障政策の司令塔となる「経済班」が設置された。安全保障の観点から経済・科学技術政策を検証し、監視を強める。経済安保の現状と課題を探る。

軍事転用へ海外の科学者招致

北京・天安門広場から約3キロ・メートルにある25階建て高層ビル。22階の一室で暮らすのは、北京理工大教授の日本人男性(70)だ。約35万円の家賃のほとんどは中国政府の予算で支払われ、温水プールやジムも併設されている。

「中国政府の千人計画に応募しませんか」

人工知能(AI)を専門とする東工大教授だった男性のもとに中国の国家プロジェクトへの参加を呼びかける1通のメールが届いたのは6年ほど前だ。送り主は、かつて同大で共に研究に当たった北京理工大の中国人教授だった。

年度末に定年退職を控え、「まだ何かをやりたい」と思っていたこの男性は呼びかけに応じた。

5年間で1億円の研究資金や給料、手厚い福利厚生――。千人計画の特徴は、破格の待遇だ。計画に詳しい関係者によると、「世界中から毎年数千人の応募が殺到し、採用は宝くじに当たるほど難しい」という。

男性は、大学の一室に約300平方メートルの研究室を構え、約15人の中国人学生の指導に当たるほか、論文発表や特許申請、国際会議の開催など中国政府が求める20余りの仕事を5年間継続している。

中国が外国の研究者を厚遇で囲い込んでいるのは、外国の進んだ技術を自らのものにしようという狙いからだ。だが、純粋に科学的な理由だけではない。

「科学技術・経済・軍事において機先を制して有利な地位を占め、将来の戦争の主導権を奪取する」

中国は2016年7月に発表した軍民融合戦略に関する方針に、こう明記している。中国にとって、軍事と民間の境目はない。むしろ、民間技術を軍事的な優位性につなげようと血眼になっている。

男性の研究も、軍事転用が可能だ。

「応用すれば、無人機を使って攻撃したり、自爆したりすることができる」

男性はこう認める。そのうえで、「自身は軍事研究に関わらず、日本に迷惑をかけないようにと考えている」と釈明しつつ、中国側の狙いについて「中国の大学は、軍事技術を進化させる研究をして成果を出すのが当たり前だという意識が強い。外国の研究者を呼ぶのは、中国にはない技術の流出を期待しているからだろう」と語った。

米国では、千人計画を通じて機微な情報が奪われかねないとして、監視や規制を強めている。

◆千人計画=世界トップの科学技術強国を目指して海外から優秀な人材を集める中国の国家プロジェクト。2008年から実施され、海外で活躍する中国人研究者らを呼び戻すもののほか、外国人を対象にした通称「外専千人計画」がある。「外専」は11年から10年間で500~1000人の採用目標を掲げている。

◆軍民融合=最先端の民間技術の軍事転用を積極的に進める中国の国家戦略。2016年3月、中国共産党の第13次5か年計画(16~20年)に「軍民のより深い融合の推進」を明記した。17年1月には、習近平シージンピン国家主席自らをトップとする「中央軍民融合発展委員会」を設立し、中国軍の近代化を図っている。

トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席(AP)

対応急ぐ米 日本出遅れ…中国との研究 乏しい問題意識

「千人計画は、機微な情報を盗み、輸出管理に違反することに報酬を与えてきた」

米司法省は今年1月、中国湖北省の武漢理工大で千人計画に参加していた事実を米政府に隠し、虚偽の説明をしたとして、米ハーバード大化学・化学生物学科長のチャールズ・リーバー教授を起訴した際、千人計画について、訴追資料の中でこう指摘した。リーバー氏はナノテクノロジーの世界的な権威として知られ、国防総省からも研究を受託していた。

千人計画などの経済安全保障上のリスクを詳細に調べた米上院小委員会の昨年の報告書も、「千人計画は、米国の経済そして安全保障上の国益を害する」と強調する。

報告書は、千人計画について〈1〉研究に補助している米国の政府・団体にうそをつかせる〈2〉米国にあるのと全く同じ研究施設を再現する「シャドーラボ」(影の研究室)を作らせる〈3〉入手が困難な知的資本を移転させる――といった米国の科学技術研究の原則に反する行為への動機を与えると指摘する。

実際、中国の人材招致計画に応募した研究者が、米軍の最新鋭ステルス戦闘機F35のエンジンに関するデータを中国に流出させた事例も報告されている。

参加者が署名する契約書に、千人計画への参加や中国での研究成果を公表させない条項が含まれている場合もあるという。

千人計画は、中国が実施中の200を超える人材招致計画の一つだ。こうした中国の計画に参加した外国の科学者や技術者、投資家らは2018年までで7000人を超えるとされる。

米政府は18年以降、中国への技術流出の防止策を次々と強化している。

米連邦捜査局(FBI)の幹部は今年2月の講演で、中国関連の技術窃盗で19会計年度(18年10月から19年9月)に24人、20会計年度には2月までに19人を逮捕したと明らかにした。

エネルギー省は昨年6月、省内の研究者や同省の予算を使う企業、大学などの関係者が外国の人材招致計画に参加することを禁止した。ホワイトハウスも同年5月、米国の科学技術システムに対する外国の不正行為を防止するための共同委員会を設置した。

こうした措置と並行し、大学や研究機関が扱う機微な新興技術に関する輸出規制も強化している。18年8月に制定された輸出管理改革法(ECRA)に基づき、「バイオテクノロジー」や「AI・機械学習」、「ロボティクス」、「極超音速」など安全保障に不可欠とされる14分野の新興技術に関する輸出規制を今年前半にも施行する見通しだ。

これまでも軍事技術の保護に神経をとがらせてきた米国でさえ、千人計画への監視や規制が強化されたのは18年になってからだ。米国ほど危機意識のない日本の対応は当然、遅れている。

日本では、千人計画への参加に関する規制はない。共同研究や寄付に関する政府への報告義務もなく、技術管理も大学ごとの取り組みに依存している。

学術界では、国内科学者の代表機関・日本学術会議が1950年、「戦争を目的とする科学の研究には絶対に従わない」とする声明をまとめ、現在も防衛装備庁の研究助成制度への参加に反対するなど、安全保障分野での研究や開発をタブー視している。

ところが、中国の軍事技術の発展につながる可能性がある共同研究などについては、問題意識が乏しい。

経済安保に取り組む自民党のルール形成戦略議員連盟の甘利明会長は、「学術会議は軍事研究につながるものは一切させないとしながら、民間技術を軍事技術に転用していく政策を明確に打ち出している中国と一緒に研究するのは学問の自由だと主張し、政府は干渉するなと言っている。日本の技術が中国の軍事技術に使われようとしても防ぐ手立てがないのが現状だ」と語る。

日本の科学技術が日本の安全保障には生かされず、中国の軍事力近代化に貢献しかねない状況だとすれば、放置していいはずがない。手遅れになる前に、リスクを排除する対策が求められる。

貼り付け元  <https://www.yomiuri.co.jp/economy/20200504-OYT1T50008/>

[安保60年]第2部 経済安全保障<2>ファーウェイ、大学の技術に触手

読売新聞全国版 2020/05/05 08:43

東北大学(仙台市)のキャンパス内で2016年1月、中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」との共同研究を呼びかけるセミナーが開かれた。

しばらくして、ファーウェイ側が研究資金を出し、電池などに関する5件ほどの共同研究が始まった。それぞれ数百万円の小規模な研究だったが、次第に関係者の間でこんなうわさがささやかれるようになった。

「共同研究をつなぎ合わせると、1台のスマートフォンができそうだ」

この話を聞きつけた経済産業省は、すぐに東北大に「懸念」を伝えた。この頃、米国ではファーウェイによるハイテク技術や情報の窃取の疑惑があるとして、大きな問題になり始めていた。

東北大では、これらの共同研究のほぼ全てを1年で終了した。ただ、ファーウェイは15年ごろから、全国各地の大学への接近を強めており、経産省幹部は「多くの大学が資金提供を受けた」と語る。

留学生使い情報狙う…リスク管理部署 公・私立大は5割未満

北京航空航天大、北京理工大、ハルビン工業大――。

オーストラリア戦略政策研究所は昨年11月、中国の少なくとも60の大学が軍事や防衛と密接なつながりがあるとして、「共同研究するには安全保障上のリスクが高い」と警鐘を鳴らす報告書を公表した。

同研究所のアナリスト、アレックス・ジョスケ氏は報告書の中で、「中国の大学との連携が、人民解放軍や治安当局によって利用されるリスクが高まっている。多額の公的資金を受け取っている各国の大学は、人権や安全保障を害することを回避する義務を負っている」と指摘する。

米国の大学は、中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」を含め国外から寄付や契約で25万ドル(約2670万円)を超える資金を受け入れた場合、政府に報告する義務がある。米政府がファーウェイへの警戒を強めて以降、スタンフォード大やミネソタ大などファーウェイとの共同研究や寄付受領を停止する大学が相次いでいる。

日本には、こうした報告制度はない。経済産業省幹部は、「どれだけの大学がファーウェイから資金を受け入れたのか正確には把握していないが、今でも共同研究を行ったり、寄付を受け取ったりしている大学はある」と打ち明ける。

「標的を物色」

大学の持つ技術は、留学生や研究者の受け入れを通じても流出しかねない。

<留学生が、輸出を規制されている薬品のボトルを無断で母国に持ち帰ろうとしていた>

<留学生を受け入れ後、母国で、大量破壊兵器の開発などが懸念される団体に属していたことが判明した>

いずれも、日本の大学の現場で実際に起きた事例だ。経産省が今年1月に更新した「ヒヤリハット事例集」に掲載されている。

これらは氷山の一角だ。豪戦略政策研究所は、山陰地方と北関東の三つの大学が、中国共産党のスパイ活動を支援しているとされる国際関係学院から中国人留学生を受け入れたと指摘する。

中国では留学生を「海亀ハイグイ」と呼ぶ。海外で成長して中国に戻ってくるという意味が込められている。中国は、留学生を使って組織的、戦略的に外国の技術を狙っているとみられている。

「中国は留学生や研究者を米国に送り出し、技術情報窃取のための標的を物色させている」

米連邦捜査局(FBI)は昨年10月に発表した報告書でこう指摘した。豪戦略政策研究所の報告書によると、2017年までの10年間で、中国軍に所属する2500人以上の科学者が日本を含む海外に派遣された可能性がある。

中国の留学生らが当初は技術窃盗の意図を持っていなくても、中国では国の情報活動に企業や国民が協力することを義務づける国家情報法が施行されており、中国当局に要請されれば拒否できないとの見方も強い。

米国では、情報機関が留学生の経歴や個人情報を調べ上げ、査証(ビザ)発給を拒否するケースが増えている。18年6月からビザ取得を一部制限したところ、中国人向けの発給が45%減少した。ただ、米側の調査が日本と情報共有されることはなく、「米国で入国拒否された学生が日本に入ってきている」との指摘がある。

「お願いベース」

ファーウェイとの共同研究を縮小した東北大は、日本において輸出管理の改革を進める大学の一つだ。

東北大では09年にイラン人留学生が使用済み核燃料の再処理に関する研究をしていた問題が発覚し、これを契機に10年3月、学内に輸出管理の一元的な対応を行う「安全保障輸出管理委員会」を設けた。教員が運営にあたる中、事務職員3人が常駐し、技術流出に目を光らせている。

委員長を長く務めた*****・東北大******副所長(許諾の関係で伏字)は、「個々の教員の判断に任せるのではなく、共同研究や実験データの持ち出しを組織として漏れなくチェックできるようになった」と意義を語る。

しかし、こうしたハイテク技術の輸出や留学生の受け入れなどを管理する担当部署は、全ての大学に設けられているわけではない。文部科学省によると、国立では昨年2月時点で94%に上る一方、公立・私立では45%にとどまっている。

政府は、大学向けに注意事項や「チェックリスト」を公表しているが、政府高官は「大学への『お願いベース』の域を出ない」と嘆息する。日本の大学は、米国などから技術流出に甘いとの懸念をもたれかねない状況だ。

「このままだと、日本の大学は最先端の研究で知られる米国の名門大学とは共同研究ができなくなる」

政府高官はこう語る。

大学における経済安全保障の強化は待ったなしだ。 貼り付け元  <https://www.yomiuri.co.jp/economy/20200504-OYT1T50168/>

[安保60年]第2部 経済安全保障<7>防衛研究阻む学術会議…予算に影響力 民間活用停滞

読売新聞全国版 2020/05/14 05:00

軍事技術と大学研究者らの関係を議論した日本学術会議の公開フォーラム(2017年2月4日、東京都港区の日本学術会議講堂で)

日本は第2次世界大戦中、企業や研究者が戦争に関与した反省から、安全保障分野での研究や開発をタブー視する空気が強い。

学術界では、国内科学者の代表機関・日本学術会議が反軍事の先頭に立つ。

「近年、再び学術と軍事が接近しつつある」

「将来の(防衛)装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、(中略)政府による研究への介入が著しく、問題が多い」

学術会議は2017年3月、防衛装備庁が15年度から始めた「安全保障技術研究推進制度」に反対し、各大学に審査を行うなどの対応を求める声明をまとめた。

この中で、「戦争を目的とする科学の研究には、今後絶対に従わない」とする1950年の声明と、「軍事目的のための科学研究を行わない」とした67年の声明を「継承する」と強調した。声明の決定前に学術会議が開いた公開フォーラムでは、同制度に参加しないよう求める意見が多かったという。

大学萎縮

防衛装備庁の制度は、将来的に防衛分野での活用を期待できる基礎研究を支援するもので、1件あたり20億円を上限に助成している。同庁は「研究に介入することはなく、公表を制限することもない」と説明する。

企業や公的研究機関を除く大学や高等専門学校などからの応募は、15年度に58件あったが、学術会議が問題視し始めた翌16年度は23件と半減。19年度は9件にとどまった。16年度から助成を受けていた北海道大は18年、学術会議の声明を尊重するとして辞退を申し出た。京都大や名古屋大も軍事研究は行わないとする基本方針を決定し、研究者に自制を促す。

声明が大きな力を持つのは、学術会議が約4兆円に上る政府の研究開発予算の配分に影響力を持っているのも一因だ。

学術会議は内閣府所管の特別機関で、政府に対する政策提言などの役割を期待されている。研究開発予算は文部科学省が配分を決めるが、学術会議は3年ごとに「マスタープラン」を策定して推進すべき重点大型研究計画を政府に推薦している。

ある国立大教授は、「学術会議ににらまれるとプロジェクトや将来のポスト獲得で不利益を被る可能性がある。学術会議が声明を出せば、大学や学会は萎縮いしゅくしたり忖度そんたくしたりしてしまう」と打ち明ける。

以前は国が主導した軍事研究の先進技術が民間に波及する「スピンオフ」が一般的だった。ところが今や、人工知能(AI)や情報通信技術に代表されるように、民間が開発した技術を軍事に取り込む「スピンオン」へと変化し、軍民の技術の「デュアルユース(両用)」化が進んでいる。

中国はさらに、最先端の科学技術を軍事に活用する「軍民融合」を国家戦略として推し進めている。

防衛省幹部は、「民間技術を活用できないままでは、日本独自の防衛力整備が立ち遅れてしまう」と嘆く。

声明に批判

ただ、過度な「軍事アレルギー」を見直す動きも起きつつある。

「軍事研究は人道に反するため行わない」とする基本方針を策定していた筑波大で昨年度、素材に関する研究が防衛装備庁の研究推進制度に採択された。先端素材「カーボンナノチューブ(炭素材料)」を使い、衝撃に強い次世代素材を創出する内容だ。

国立大学協会長も兼ねる永田恭介・同大学長は今年3月26日の記者会見で、同制度への応募を認めた理由について、コロナなどのウイルスに対するワクチン研究が生物化学兵器に転用される可能性を例に「デュアルユースは(線引きが)難しい」としたうえで、「自衛のためにする研究は、省庁がどこであれ正しいと思う」と語った。

研究者の間からも、学術会議の声明への批判が出ている。東大の****教授(天文学)(許諾の関係で伏字)は18年12月に発表した「学術会議声明批判」と題した論文で、「『いかなる軍事研究もしてはいけない』という考えをすべての人に要求するのはあまりに一面的だ」とし、こう指摘した。 「戦争の惨禍が軍事によって生み出されるのは自明だが、平和を生み出し維持するうえでも軍事というものが大きな存在となっていることは明らかだ」

貼り付け元  <https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200514-OYT1T50119/>

[安保60年]第2部 経済安全保障<8>縦割り打破の「経済班」

読売新聞全国版 2020/05/16 05:00

日米連携向上 中国は警戒

国家安全保障局経済班の設置発足式であいさつする菅官房長官(4月6日、首相官邸で)

「安全保障と経済を横断する領域で課題は山積している。我が国の安全保障政策の節目だ」

4月6日、首相官邸の会議室で開かれた国家安全保障局(NSS)経済班の発足式で、菅官房長官はげきを飛ばした。

経済班には、7班あるNSSで最大規模の約20人が配属された。トップの審議官には経済産業省出身の藤井敏彦氏を起用し、課長級ポストには総務、財務、外務、警察各省庁出身者が配置された。「経済官庁のエース級」(内閣官房幹部)をそろえた混成部隊は、経済安保の司令塔役を期待されている。

「安保マインドの保持・共有」「経済系と安保系の混在」

政府が昨年秋に取りまとめた経済班の基本概念に関する資料には、安保と経済の融合を強調する言葉が並ぶ。それは、最近まで経済安保の意識が低かったことの裏返しとも言える。

日本で経済安保の意識が高まらなかったのは、戦後、安全保障と産業・科学技術政策が切り離され、各省庁が縦割りで政策を進めてきたのが一因だ。科学技術を文部科学省や内閣府、産業育成を経産省、情報通信を総務省が別々に担い、安全保障を担当する外務、防衛両省との調整は不十分だった。

歓迎

経済班は、サイバー、科学技術、国際経済などの専門知識を有するスタッフが30人以上いるとされる米国家安全保障会議(NSC)などがモデルとされ、省庁縦割りの打破を目指す。

「待っていたよ。ようやく日本に話ができる相手ができた」

昨年暮れ、経済班設置準備室ができた後に藤井氏があいさつでワシントンを訪れると、NSC高官からこう歓迎された。

「これまでは外務省と経産省で言っていることが違った。一体どこが経済安保の担当なのかわからなかった」

藤井氏と面会したホワイトハウスや米国シンクタンクの関係者からは、こうした声も相次いだ。

経済安保の窓口の一本化で、「日米連携の幅が広がる」(政府関係者)と期待する声が出ている。

日米両政府は今後、人工知能(AI)やバイオテクノロジーなど、軍事転用可能な機微技術の管理をめぐり、連携を強化していく方針だ。

疑念

こうした日本の動きに、中国は神経をとがらせている。

「特定の国を念頭に置いたものなのか」

2月下旬、来日した中国外交トップの楊潔チ(よう・けつち)共産党政治局員は日本政府高官に対し、経済班設置についてこう疑念を向けたという。中国通信大手「華為技術」(ファーウェイ)の排除を進める米政府と歩調を合わせるための組織だと見る警戒感がにじむ。

米中対立が激化する中、安倍首相は双方と関係を築くことに腐心し、国際社会で存在感を発揮してきた。トランプ大統領との親密な関係を維持する一方、2018年10月には日本の首相として7年ぶりに中国を公式訪問し、新型コロナウイルスの感染収束後には習近平シージンピン国家主席を国賓として日本に迎えようとしている。

経済班は、日米同盟に新たな活力を与える一方、積み上げた日中関係を壊しかねない両刃の剣だ。

****総研の****代表(許諾の関係で伏字)は、「日本は隣国である中国とも付き合わないといけない。米中の文脈だけで考えるのではなく、インドやオーストラリアなど友好国とも連携し、集団的に対処する戦略を練るべきだ」と指摘する。

トランプ氏は中国を新型コロナウイルスの感染源と非難し、米中対立は一層先鋭化しつつある。嵐の中でどう振る舞うことが日本の国益となるのか。経済班はいきなり、試練に直面している。

貼り付け元  <https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200516-OYT1T50092/>

【独自】日米 経済安保で対話 枠組み新設へ…先端技術管理を協議

読売新聞全国版  2020/05/16 05:00

日米両政府は、経済安全保障に関する事務レベルの政府間対話を新設する方針を固めた。軍事転用可能な先端技術の管理や次世代通信規格「5G」の安全な通信網確保などについて具体策を協議する。複数の日米関係筋が明らかにした。

日米両政府が経済安保の包括的な対話の枠組みを設けるのは初めて。年内にも初会合が開かれる。

4月に内閣官房の国家安全保障局に新設された「経済班」が日本側の窓口となる。経済班トップの藤井敏彦内閣審議官が日本側の議長を務め、外務省や経済産業省、文部科学省、内閣府などの局長級や審議官級が加わる。米側は国家安全保障会議(NSC)、国家経済会議(NEC)、国務省、国防総省、商務省などから参加する見通しだ。

日米は、軍事転用できる「デュアルユース」技術を安易に海外流出させない施策などで連携を深めたい考えだ。〈1〉対内直接投資監視強化や輸出管理の徹底〈2〉国内大学や研究機関における外国人留学生の扱い〈3〉安全な5G通信網構築――などが議題になるとみられる。

中国は、民間の技術を活用して軍事力増強を目指す「軍民融合」を進めている。米国はこうした中国の覇権拡大の動きに警戒を強めており、新たな対話を通じて日本に同調を求める狙いもありそうだ。

貼り付け元  <https://www.yomiuri.co.jp/economy/20200516-OYT1T50065/>

[安保60年]第2部 経済安全保障<9>機微技術 把握・防御急ぐ…自民党税調会長 甘利明氏

読売新聞全国版 2020/05/17 05:00

非公開の「秘密特許」検討を

慶大法卒。ソニー勤務を経て、1983年衆院選で初当選。経済産業相や経済再生相、TPP(環太平洋経済連携協定)担当相などを歴任し、2019年9月から現職。自民党のルール形成戦略議員連盟の会長を務めるなど、経済安全保障について早くから警鐘を鳴らしてきた。70歳。

――日本における経済安全保障の現状は。

一言でいうと「能天気」ということに尽きる。日本には経済安全保障という認識がほぼなかった。

中国は、経済的な手段を用いて相手国を強引に自らの意向に沿わせることを戦略的にやっている。レアアース(希土類)の輸出規制などの経済制裁がその典型で、機微技術をあらゆる手段で奪って相手国の企業をおとしめるのもそうだ。こうしたやり方は「エコノミック・ステートクラフト(経済外交策)」と呼ばれる。

さらに習近平シージンピン政権では、軍民は単に「連携」ではなく、「融合」している。民間の研究者は軍と一体であり、民間技術の軍事への転用を超え、今や最初から一体で開発する政策を明確に打ち出している。そのため中国の大学や研究機関には軍の研究者が所属しており、共同研究を通じて外国から進んだ技術を抜き取っている。米豪は急ピッチで対処を進めているが、日本は政府も対応が追い付かず、企業や大学はなおさらだ。

――日本の大学が狙われている。

米国では、研究予算を大学に出す際、機微技術として守るべきか、自由に他国と連携していいのかを選別し、守るべきものには厳しい制約をかけている。

日本では、科学者の代表機関である日本学術会議が、国は研究にお金を出しても、「学問の自由」なので一切干渉するなと言う。研究成果が中国の軍事技術に使われようと、防ぐ手立てがないのが現状だ。

そもそも日本では、守るべき技術の仕分けすら十分にはできていない。まずやるべきことは、何をもって機微技術とするのか、どこでその技術を研究しているのか、政府が把握することだ。そして、企業や大学を技術エリアごとに個別に評価し、防御するための意識と体制を作っていくべきだ。

――4月に国家安全保障局に経済班が設置された。

私が会長を務める自民党ルール形成戦略議連では昨年5月、米国家経済会議(NEC)をモデルに、戦略的外交・経済政策の司令塔となる「日本版NEC」の創設を政府に提言した。機微技術の管理を含め、この役割を担うのが、国家安全保障局(NSS)の経済班だ。日本の政府に初めて、安全保障と経済政策を組み合わせ、俯瞰ふかんできる部署が誕生したと言える。

――米中の技術覇権争いが強まる中、日本はいかに振る舞うべきか。

米中いずれかを選ぶのではなく、どの分野なら中国と協力していいかを議論しなければならない。すでに公開されている技術の量産であれば、中国と組んでもいい。だが、安全保障の根幹をなす技術は、中国と組めば必ず軍事転用される。

――日本に求められる取り組みは。

機微技術の管理は、国民の安全を守るためのものだ。人権を制約することなく、「普通の国」並みに経済安全保障を具体的な法律の形にしていくことが重要だ。

現在の特許制度の下では、日本が卓越している技術まですべて公開されている。外国がやっているような、一部の機微技術を非公開とする「秘密特許」を検討すべきだ。

また、身辺調査をしたうえで、情報漏えいの恐れがないと認定された人物しか機密情報を閲覧できないようにする「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度も早急に導入すべきだ。機微技術を扱う国ではほぼ整備されており、このままだと、先端技術の共同研究などから日本の企業や大学は真っ先に外され、国際社会の研究の流れから取り残されてしまう。

貼り付け元  <https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200516-OYT1T50267/>

日本経済新聞

日本経済新聞も経済安保の特集をしてくださいました。

日本経済新聞社との許諾契約締結はしていないので、詳細はお見せできませんが、読売新聞の連載とは切り口の違う記事です。

省庁越え政策練る「経済班」 コロナや技術流出に対処
経済安保政策を追う(上)  2020/6/3
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59899990S0A600C2EE8000/

狙われる先端技術 ロボットやバイオ、買収阻止
経済安保政策を追う(中) 2020年6月4日
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO59944600T00C20A6EE8000
↑大学での先端技術の流出について書いています

政官民でコロナ後に備え 激化する米中覇権争い
経済安保政策を追う(下)  2020/6/5
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60005340U0A600C2EE8000/

立て続けに政府の経済安保政策が打ち出されています

転載の許諾申請手続きを行っていませんので、タイトルとURLだけご紹介させていただきます。
当会としては、注意深く見つめていきたいと思います。

 要点としては
・大学の外部資金源の開示義務づけ、虚偽報告には補助金停止など
・留学生の審査強化
・政府の統合イノベーション戦略2020の素案が明らかに、7月中旬にも閣議決定予定
 となります

先端技術の海外流出防止 政府補助、資金源の開示条件  日本経済新聞  2020/6/23 18:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60686450T20C20A6MM8000/

中国の学術スパイ警戒…研究資金開示 政府、米の対策参考  読売新聞  2020/06/24 05:00 
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200624-OYT1T50111

【独自】外国研究資金、原則開示…技術の海外流出阻止へ政府方針  読売新聞  2020/06/24 07:03
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200624-OYT1T50081

留学生審査を厳格化…政府戦略素案、「学術スパイ」を警戒  読売新聞  2020/06/26 15:53
https://www.yomiuri.co.jp/member/scrap/20200626-OYT1T50227

大学の海外からの資金、虚偽申告なら補助停止 政府、技術流出防止へ 留学生審査も厳格に  日本経済新聞  2020/6/26 23:31
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60879710W0A620C2EA3000

先端技術の流出対策 強化 政府戦略素案…留学生審査 見直し  読売新聞  2020/06/27 05:00  
https://www.yomiuri.co.jp/science/20200627-OYT1T50074